研究概要 |
平成6年度は13q,16q,17p染色体の欠失や癌転移抑制遺伝子nm23H1の発現の検索例を増やし、病理学的因子・核DNA量解析などの従来の生物学的悪性度指標と組み合わせたり、染色体欠失パターンの解析を行い、以下の知見が得られた。 1.染色体欠失頻度やnm23H1発現低下頻度はStageの進行度と共に高率となり、特に16q染色体欠失はStageIでは1例も認められず、StagelIl、IVでは高率に認められた, 2.2つ以上の染色体欠失例やnm23H1発現低下例ではvp、im陽性率、Aneuploidの頻度、AgNOR数は高値を示した, 3.1年末満の早期再発例ではvp、im共に陽性例やAneuploid例が70%以上を占め、特に残肝多発再発や肝外転移を来したものでは2つ以上の染色体欠失例やnm23H1発現低下例を高率に認めた。 4.Aneuploid例でも治癒切除例で染色体欠失数が少なく、nm23H1発現低下のないものでは比較的予後良好であった。 5.多発肝癌の8例中3例で染色体欠失パターンの相違から同時性多中心性発生の診断が可能であった, 以上、肝癌切除例の増加に伴い,従来の悪性度指標と組み合わせて肝癌のより詳細な悪性度評価に有用であることや多中心性発生の診断も可能であることをより明確にすることができた・最近.癌転移抑制遺伝子nm23H1の発現について,デンシトメトリーを用いた定量的発現レベルを検索し、予後との間に相関を認めることが推測され,この点につき、症例を再検討中である,また、残肝再発再切除例は症例数が少なく、異時性多中心性発生の遺伝子レベルでの診断は困難であったが,現在、数例症例が増えたので染色体欠失パターンを解析中である。今後もこれらの症例を増やすとともに、癌抑制遺伝子p53の不活化や接着分子特に肝癌のprogressionに関係のあった16q染色体上に位置するE-cadherinやCAR(cell adhesion regulator)遺伝子の発現について調べ、予後との関係を検索していく予定である。
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