研究概要 |
急性膵炎の発症には消化酵素の分泌障害が引き金になっていることが考えられており,さらに高カルシウム血症,CCKなどの分泌刺激も膵炎発症・重症化に関与している事が明らかになってきている。CCKなどの分泌刺激は膜に存在するCCK-Reaeptorと結合し,IP_3などに伝達され,さらに細胞内遊離カルシウム濃度を上昇させ分泌刺激を伝達する。今回,細胞内遊離カルシウムなどの細胞内刺激伝達系が急性膵炎の発症に関与しているか,さらにどのよう関与しているのかを検討した。ラットにおける膵管閉塞の影響を見るとCCK系の刺激による外分泌機能は障害されており,腺房細胞を使った杯宮によりCCK刺激により細胞内カルシウム濃度は上昇するが,それ以後の分泌過程における機能障害が重要であることが明らかとなった。セルレイン膵炎では,CCKのCCK-reaeptorへの結合が減少し,細胞内カルシウムの上昇は膵炎発症の後期まで保たれているが,外分泌機能障害は早期より認められた。ヒトにおける検討では,膵管閉塞群で著明な外分泌機能の低下を認めるが,膵管狭窄群においても著明な外分泌機能障害を認めた。これらの結果から急性膵炎の原因により細胞内刺激伝達系の膵炎発症に対する役割は異なるが,ヒトの膵炎発症の原因の内,最も頻度の高いものとして考えられている膵管閉塞における膵腺房細胞内の病態が明らかになり,膵炎発症における膵腺房細胞内の変化の重要力が示唆された。
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