研究概要 |
現時点までに食道癌切除後の遺残転移リンパ節に対するCDDPマイクロスフェア-(CDDP-MS)の縦隔内投与法について、家兎VX2食道癌で食道切除後の遺残転移リンパ節を伴うモデルを用いその有用性を検討してきた。すなわち目的とする転移リンパ節へCDDPを高濃度に移行させ良好な抗腫瘍効果を得て、一方腎臓等の臓器へは低濃度で副作用を抑え得ることを実験的に実証した。本年度では実験モデルにおいてさらに転移抑制効果について検討するとともに臨床応用をも試みた。CDDP-MS投与後14日目の各臓器への組織移行については、縦隔内転移リンパ節の組織内Pt濃度は0.81μg/gでfreeCDDPの縦隔内投与やfreeCDDP静脈投与の0.46μg/g、0.53μg/gに比べて高値を示し、また腎臓では0.08μg/gと他の2群の0.22μg/g、0.25μg/gと比して低濃度であった。以上より長期間経過した時点でも転移リンパ節に高濃度で長時間作用していることより転移抑制効果が期待できると考えられ、遠隔リンパ節、肝臓、肺への転移抑制効果について現在検討中である。臨床応用として胸部食道癌切除例において右開胸腹胸部食道摘出、胃管による再建術を施行しその際に後縦隔内の気管分岐部周囲に先端が来る様にカテーテルを留置する方法で、術後約2週間目にCDDP-MS(CDDP力価で0.4〜0.5mg/kg)を注入した(計5症例)。血中Pt濃度は6時間後0.47μg/ml,1日目0.43μg/ml,7日目0.47μg/ml,14日目0.40μg/mlと長期間にわたり低値で滞留しており、特に副作用を呈さなかった。本療法の手技は非常に簡便であり抗癌剤を高濃度で長時間作用できることより有効性が期待されるが、臨床効果を判定するには症例の蓄積と経過観察が必要であり今後の検討課題としたい。
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