研究概要 |
1.シスプラチンの癌細胞内到達性に及ぼす浸透圧の影響(in vitro): 癌細胞内へのシスプラチン到達量は溶液浸透圧の低下に伴って増加し、その細胞の殺細胞効果も増大する。 2.腹腔内担癌マウスにおける薬物動態(in vivo): 腹腔内癌細胞へのシスプラチン到達量は腹腔内浸透圧の低下に伴って増加し、その細胞の殺細胞効果も増大する。それにより担癌マウスの生存期間も延長し、治療効果の増大が得られる。しかし、この浸透圧低下に応じて、薬剤の血中濃度も増大し、シスプラチンのLD_<50>は減少し毒性は増強される。 3.腹腔内担癌マウスに対する治療効果(in vivo): LD_<50>の1/2量のシスプラチン腹腔内投与では、マウス生存期間は浸透圧の低下に伴って延長し、腹腔内低浸透圧化学療法の有用性が確認された。この際の血中シスプラチン濃度は各々の浸透圧でほぼ同様であり、毒性の増強は全く認められない。 4.腹腔内固型転移巣における薬物動態(in vivo): 上記(2,3)における腹腔内浮遊癌細胞のみならず、腹腔内固型腫瘍へのシスプラチン到達性も、低浸透圧腹腔内化学療法により増大する。 5.今後の課題: (1)腹腔内浸透圧が下降するほど抗腫瘍性が増強する反面、毒性も増強する。双方を並立させる至適な浸透圧と薬剤投与量を確立したい。 (2)臨床症例への応用は、現在、胃癌患者を対象に施行中である。
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