研究課題/領域番号 |
06671289
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水元 一博 九州大学, 医学部, 助手 (90253418)
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研究分担者 |
田中 雅夫 九州大学, 医学部, 教授 (30163570)
志村 英生 九州大学, 医学部, 講師 (80178996)
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キーワード | 膵癌 / 放射線照射 / アポトーシス / ネクローシス |
研究概要 |
膵癌細胞に対する集学的治療の改善を目的として、大線量照射による膵癌細胞の細胞死を中心とし、ヒト膵癌培養細胞におけるネクローシスとアポトーシスについて検討した。実験に用いたヒト膵癌培養細胞株は、MIAPaca-2とPanc-1で、さらに当施設にて確立したヒト胆嚢癌細胞株GB-d1も合わせて使用した。trypan blue exclusion testによって染色される細胞を死細胞とし、浮遊細胞と付着細胞をそれぞれ別個に染色するとともに、coulter counterによる細胞数の計測をおこなって死細胞率を決定した。50Gyの大線量X線を照射し5日目に細胞死をみると3種の細胞とも60%異常の細胞死が観察された。照射後1μMのcycloheximideを投与した群では、3種の細胞株のすべてで有意な細胞死の抑制が観察された。パパニコロ染色ではすべての細胞株でアポトーシスの典型的な像とされる核の断片化とapoptotic bodyが観察された。照射後の細胞からDNAを抽出して電気泳動をおこなうとPanc-1およびGB-d1では、200bpごとのladder patternが観察されたが、MIApaca2ではこれがみられず、DNAは、smear状を呈した。MIApaca2にetoposide10μMを投与してもDNAは同様にsmear状であった。MIApaca2に50Gy照射し24時間後に細胞周期をみるとG2-M期が94%となり、著名なG2-M arrestをみとめ、etoposideでも同様にG2-Mへの集積を認めた。TBHPを投与すると6時間でほぼすべての細胞がネクローシスに至り、Flowcytometryでは細胞周期の変化は観察されなかった。今回の研究により、膵癌および胆嚢癌細胞株において大線量X線照射をおこなうとアポトーシスによって細胞死がおこることが示唆され、少なくともネクローシスによる細胞死とは全く異なる細胞死であった。これらの知見は今度の膵癌における集学的治療を改善させる上で重要な基礎的情報となると思われる。
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