研究概要 |
癌性腹膜炎の新しい化学療法の剤形として、マイクロスフェア化抗癌剤を開発した。シスプラチン、5-フルオロウラシルやメトトレキサートをマイクロスフェア化したもの(CDDP-MSと5FU-MS、MTX-MS)では、これらの抗癌剤成分が3週間以上に渡って徐放性に放出される剤形となった。 これらを用いた動物実験では、腹腔内には高濃度の抗癌剤を長時間に渡って作用させた一方、その他の全身へは低濃度の抗癌剤を作用させるという、標的化学療法が達成された。 治療効果の検討では、CDDP-MS,5FU-MS,MTX-MSではそれらの水溶液に比較して、マウス癌性腹膜炎に対して著明な治療効果の増強が認められた。 動物実験における副作用の検討では、CDDP-MSと5FU-MSでは水溶液に比較して著しい全身的副作用(致死的毒性)の軽減を認めた。MTX-MSでは、予備実験とは異なり、本実験では水溶液に比較しても全身的な副作用の増強が認められた。 臨床的応用は一番完成度の優れたCDDP-MSを用いて行った。癌性腹水の貯留した末期癌患者にシスプラチンとして100mgから200mgのCDDP-MSを一回腹腔内に投与した。治療効果は70%から80%に認められた。また副作用は、シスプラチン水溶液に比較して明らかに軽く、臨床的にも使用可能と考えられた。 以上のようにシスプタチンや5フルオロウラシルを用いたマイクロスフェア化抗癌剤は、毒性の軽減、治療効果の増強という優れた特性を示し、将来有望な抗癌剤の剤形として、臨床応用が可能であることが示唆された。
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