研究概要 |
サイクロトロンおよび自動合成装置により作成したC^<15>Oを全身麻酔下の家兎に1回吸入させ、ポジトロンCTスキャンを行い、肝血液量を算出した。また、ヒトではH_2^<15>O1回静注による動態法を用いた肝血流量測定およびC^<15>O_2連続吸入による定常法を用いた肝血流量測定[肝血流指数(HPI)]を行った。肝血流指数(HPI)は非障害肝、慢性肝炎、肝硬変とすすむにつれ低下し、非障害肝と肝硬変では有意差が認められた(p=0.025)。しかし、肝硬変症例に限ればChild A、B、Cと進むにしたがってHPIは上昇した。HPIはICGR_<15>とp=0.04で相関を示したがr=-0.21と相関係数は低値であった。ただし、ICG不耐症であった1例を除くとp=0.02、r=-0.25であった。HPIはヘパプラスチンテスト(r=0.31,p=0.002)およびg-グロブリン(g-Glb)(r=-0.24,p=0.02)と有意の相関を示したがプロトロンビン(PT)時間(r=0.058,P=0.57)、TTT(r=0.13,p=0.21)とは相関を示さなかった。さらに、HPIはICGR_<15>、HPT、PT時間、g-Glb、ZTT、TTT、コリンエステラーゼ、アルブミン、総コレステロール、総ビリルビン値と重相関した(r=0.46,p=0.02)。また、HPIはH_2^<15>O1回静注による動態法による総肝血流量(HBFt)と相関した(r=0.34,p=0.0006)。これは動態法による門脈血流量(HBFp)(r=0.21,p=0.04)との相関より動脈血流量(HBFa)(r=0.61,p=3.2×10^<-11>)との相関によるものであると考えられた。すなわち、HPIは総肝血流量よりむしろ肝動脈血流量を反映しており、そのため重症の慢性肝障害の場合、HPIでは肝障害の程度を過小評価する可能性があると考えられた。したがって、慢性肝障害が進行しているときにはH_2^<15>O静注動態法を行った方が正確と考えられた。しかし、C^<15>O_2吸入定常法は簡単であるので、肝障害のスクリーニングに利用価値があると考えられた。
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