研究概要 |
SW1990細胞は高転移性で糖鎖抗原を強発現しているが、平成7年度の検討から、本細胞を糖鎖合成阻害剤にて処理した結果、細胞外マトリックスへの接着および細胞間接着が増強し、この糖鎖抗原発現変化に伴う接着能の変化も、SW1990の高転移性の一部に関与していると考えられた。またSW1990のELAM-1を介した血管内皮細胞接着が肝転移に重要な役割を果たしていることが明らかとなったが、血管内皮細胞上のELAM-1発現誘導機序については明らかでなかった。そこで膵癌細胞と末梢血単核球との相互作用を検討した結果、両者の混合培養時に培養上清中にTNF-α,IK-1βが産生され、このサイトカインにより実際血管内皮細胞上にELAM-1発現誘導が可能であり、この活性化された内皮細胞に高転移性細胞が高頻度に接着することが明らかとなった。また単核球との相互作用では細胞傷害活性も肝転移に大きく関与し、高転移性細胞では細胞傷害は軽度であるのに対し、低転移性細胞では傷害が強くそこにもリンパ球との接着を阻害している癌細胞表面上糖鎖抗原発現の関与が示唆された。SW1990より高転移性sub line(Lmet-1)の樹立が可能であったが、Lmet-1はSE1990と比較し糖鎖抗原発現、血管内皮細胞への接着性が強く肝転移能と相関し、これまでの成績と合致した。またSW1990のxenograft腫瘍片のヌードマウス膵逢着にて同所移植モデル作製が可能であり、今後の検討に応用できるものと考えられる。
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