研究概要 |
本年度はまず基礎実験として、雑種成犬10頭を用いて各種刺激時の上部食道昇圧帯(UES)機能について検討した。無麻酔下に内圧測定が可能なようにあらかじめ造設したBeck-Jiano法で作成した胃瘻より内圧測定用チューブを逆行性に挿入し、非刺激時のUES圧(UESP)を測定した。咽頭内圧を0点とし、Stationary pull-through法に準じて口側から肛門側にむけて1cmずつ抜去すると、咽頭食道境界部で内圧が上昇しついに食道内圧になるまでをUSEとした。この昇圧帯内で圧が最高となる部位での5秒間の平均値を静止圧UESPとした。なお内圧測定には3mmにわたりオイルを封入したシリコンラバーチューブ内にMicrotip型圧力Transducerを組み込み全周性に圧が感受できるものを用いた。非刺激時UESPは33mmHgであった。つぎにUESより5cm,10cmの頸部食道でバルーンを直径1.5,2,2.5cmに拡張すなわち食道壁に伸展刺激を加えた時、並びに0.1N HCL,0.1N NaOHをUESより肛門側10cmの食道に0.5ml/minの速度で滴下し時のUESPを測定した。非刺激時UESPに較べてバルーンによる壁伸展刺激時UESPはバルーン径が大きくなるほど有為に上昇し、またUESに近い部に刺激を加えるほどその圧上昇は大きかった。酸刺激時とアルカリ刺激時ではUESPは経時的に上昇した。以上のような結果が得られ、平成7年度に予定している反回神経切断時ならびに食道離断時の各種刺激に対する上部食道昇圧帯の反応を調べる上での基礎的なデータが得られた。
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