研究概要 |
1.中下部直腸癌に対して肛門括約筋温存直腸切除術を施行された23例に術前・術後の直腸肛門機能検査と術後の排便機能のアンケート調査を行なった。ストレート型の再建13例と,結腸嚢を用いる再建10例を比較検討したところ,結腸嚢を用いた例で術後の排便障害の臨床症状が軽微であり,機能検査のうえでは,直腸の便貯留能が良好に保たれていた。2.99mTc-DTPAを用いるRI排便造影を,肛門括約筋温存直腸切除術後の23例,正常対照例10例に施行した。ストレート型再建例のうち,吻合部が肛門から遠い例では,正常対照例に近い排便パターンが観察されたが,吻合部が肛門に近い例では,便排泄能は保持されていたが,正常例で観察される排便初期の下部直腸の拡張が観察されなかった。また,結腸嚢を用いて再建した例では,排便に要する時間の延長と直腸に注入した造影剤の排泄不全が認められた。3.術後排便障害の症状が強い6例に,S状結腸直腸の長時間内圧検査を施行した。これらの例では,S状結腸直腸のhypermotilityが記録された。4.ストレート型再建の術後症例22例に,X線不透過マーカーを用いる大腸通過時間検査と直腸肛門機能検査の両方を施行した。腹痛・腹部膨満感などの腹部症状を有する例では全大腸・左側大腸通過時間が長く,直腸容量がある程度保たれていた例において,全大腸・左側大腸通過時間の長い例で排便機能も不良であった。5.平成6年度に結果が得られた,1)肛門感覚と術後の排便機能の関係,2)注腸造影に引き続き行う簡易排便造影による,正常例,肛門括約筋温存直腸切除術後症例の骨盤底形態・動態の検討,3)術前の直腸肛門機能検査の結果にもとづく術後の排便障害の重症度予測,については,それぞれ原著論文として医学雑誌に掲載済み,または掲載予定である。
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