研究概要 |
ヒト大腸癌をヌードマウスの盲腸壁に縫着した同所再建肝転移モデルの作製について検討した. 方法は癌組織片(3mm角)を吸収糸を用いてヌードマウスの盲腸壁に縫着し,6週後にマウスを屠殺し肝転移の有無を観察するものである.その結果,ヌードマウス可移植性ヒト大腸癌株10株中7株70%に肝転移巣が観察された.さらに,この転移が腹膜播種出はなく血行性転移によるものであることを証明するため移植10日後に再開腹し盲腸(原発巣)を切除した.その6週後に屠殺し転移の有無を,肝表面に露出した転移結節数を算定して評価した.対象群は盲腸で全例に良好な腫瘍の増殖を認め,肝転移は高転移株において全て観察された.一方,原発巣切除群においては局所再発も肝転移も全く認めなかった.病理組織学的な検索では,移植10日後に切除された原発巣は腸管壁から固有筋層に達する浸潤像は認めたが,脈管侵襲は認めなかった.しかし,6週間後の対照群においては癌組織は腸管壁から粘膜にまで達しており,著しい脈管侵襲を認めた. 以上より,ヌードマウスを用いたヒト大腸癌肝転移モデルの作製に成功した.ヌードマウス可移植性ヒト癌株のうちでも本法において転移性のあるものと非転移性のものがあると考えられた.さらに,組織学的な検討により盲腸への癌組織縫着後より10日後以降に脈管侵襲が生じ,原発巣の切除によって肝転移が阻止されるとから,本モデルの肝転移は播種性に生じたのではなく脈管侵襲にともなう血行性転移であると考えられた.このように,本モデルは臨床における大腸癌の肝転移の過程を表現していると考えられた.現在,本モデルを用いた実験的治療を行なっている.
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