研究概要 |
〈目的〉 ヒト癌同所再建による肝転移モデルを大腸癌で作製することに成功し報告した。 本モデルでは転移成立過程を順に追うことが可能なため、各々の段階における増殖因子や接着因子の発現の変化を検討し得るばかりでなく,抗体投与によって各因子の機能を解明が可能である.そこで,転移形成能から大腸癌の高転移群と低転移群とに分類し各種接着因子や増殖因子の発現が如何に変化するかを検討し各々の転移形成における意義についても明らかにしていく. 〈研究実績の概要〉 各種ヒト大腸癌細胞株の組織片をヌードマウス盲腸壁に縫着し同所再建肝転移モデルを作製し転移株と非転移株とに分別した.大腸癌株を脈管侵襲が認められる盲腸移植10日後に,盲腸を切除したところ肝転移は観察されなかったことから,本モデルの転移は播種性ではなく血行性であることが明らかになった.さらに,脾内注入モデル,肝内注入モデル,肝縫着モデルにおいて同様のヒト癌株を用いて転移または増殖の有無を検討した.その結果,転移株は全てのモデルにおいて転移巣を形成し肝において増殖可能であった.一方,非転移株はこれらのモデルでの肝において転移・増殖せず,肝縫着モデルにおいては肝表面に増殖し得ても,肝内への浸潤は認められなかった.また,肝転移巣から高転移株をクローニングすることに成功し,現在は高転移株と低転移株の間に如何なる細胞生物学的特性の相違があるか,生化学的に検討している.上記の結果から,大腸癌が肝転移巣を形成するうえで両者の相互作用は重要であると考え,in vitroにおいて肝細胞と癌細胞との相互作用を,細胞増殖とくに増殖因子の面から検討している.
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