研究概要 |
大腸癌の間質膠原栓維-癌細胞基底膜-癌細胞膜裏打ち構造を構成する各成分を、免疫走査電子顕微鏡(免疫SEM)法を用いて三次元観察下で同定することを目的として,手技の改良と観察結果の確認を行ってきた。免疫SEM観察はこれまで遊離細胞レベルで行われてきているが、組織レベルへの応用はほとんどみられないことから、試料の作成過程で多くの工夫を行なった。免疫学的標識部位の確認には免疫透過電子顕微鏡(免疫TEM)観察、および免疫染色の結果を立体像として観察できる点で有力な共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)観察を併せて施行し、正常大腸の粘膜固有層結合組織と腺管(aypt)との境界部を観察して比較した。 (平成6年度の研究結果)1.ロ型コラーゲンの局在観察:免疫SEMによる観察では癌間質に不規則に増生した膠原線維が金コロイド粒子で標識され,腫瘍腺管の基底膜に達する細線維は標識されなかった。CLSMによる観察では間質膠原線維の立体的な染色像,殊に浸潤部腫瘍腺管に隣接する線維束に強い染色像が得られ,免疫SEMでの観察結果を裏付けていた。2.ロ型コラーゲンの局在観察:免疫SEM観察では腫瘍腺管の不連続性の基底膜,および細血管の基底膜に金コロイド粒子の付着を認め,CLSMでも同部位の立体的な染色像が得られた。 (平成6年度に得られた成果とその意義)これまで通常のSEMで観察してきた間質膠原線維の,どこまでがロ型コラーゲンでどこまでが非ロ型(ロ型など)であるのか,また腫瘍腺管基底膜に接してこれに平行して間質膠原線維が存在するときどちらがロ型コラーゲンなのか,を三次元的微細形態上で同定することが可能となった。 (今後の課題)金コロイド粒子の局在を反射電子像で捉えて画像解析により数量化することも進めるとともに,細胞内の細胞膜裏打ち構造の構成成分を標識し,立体像として観察して癌と間質との関係をさらに明らかにする。
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