研究概要 |
平成6年度は,3ヶ年計画で行う本研究の初年度にあたり,研究計画や体制の整備に時間を要した。まず,膵頭十二指腸切除術の膵腸吻合に際し,残存膵の形態から,膵の線維化が高度で膵外分泌機能の低いものをA群(low risk group),膵が軟らかく膵外分泌機能が正常に保たれているものをB群(high risk group)とに分け,各々に対するソマトスタチンの膵腸吻合縫合不全に対する抑制効果を検討した。 A群(n=5)ではソマトスタチン投与例と非投与例のいずれにも縫合不全の発生をみなかった。B群(n=4)では,ソマトスタチン投与例と非投与例の各々1例に膵腸吻合縫合不全の発生をみたが,いずれも重篤化せずに膵瘻化して治癒した。膵瘻化してから治癒するまでの期間は,ソマトスタチン投与例では7日間であったが,ソマトスタチン非投与例では12日間と統計学的有意差はなかったが,ソマトスタチン投与例が非投与例に比べて若干,早い傾向がみられた。経過中の膵外分泌機能の評価として血清アミラーゼ値,リパーゼ値の推移や,各種ホルモンの推移にも両者間で明らかな,差を認めなかった。今後,次年度の研究計画と同時進行の形で症例の追加と更なる分析を行なってゆきたい。
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