研究概要 |
平成7年度はマイクロマニュピュレーターを移動ステージ上に乗せて、ラット腸間膜内の細動脈、毛細管細静脈、リンパ管内にAH130肝癌細胞を注入して、各脈管内での運動を高速度ビデオで記録解析する予定であった。しかし移動ステージ上にマイクロマニュピュレータを搭載することが技術的に無理であった。そのため平成6年度と同様、AH130を頸動脈から大動脈内に注入する系を用い、無処置群を対照としてヘパリン投与、プロスタグランジンE1,I2(PGE1,PGI2)投与別に各脈管内でのAH130の運動を観察した。無処置群では赤血球、白血球のSluggingがすぐに起こり、AH130はそれらの血球の間に閉じこめられてしまう。ヘパリン、PGE1,PGI2投与群では白血球の細動脈壁への膠着は起こるが、赤血球の流れはスムースでAH130は細動脈内をひっかかりながらも通過していく像が記録された。 毛細管後細静脈、リンパ管内のAH130の運動を記録しようと、小腸壁内、パイエル板内にAH130を注入したが、AH130が漿膜面へ漏出してしまうためきれいな画像が得られなかった。腸間膜リンパ節内へ注入すればリンパ管内の観察が出来ると考えたが、厚い脂肪組織に透過光が遮られ、観察は不可能であった。 血小板凝集抑制作用のある薬剤で癌細胞の細動脈内での停滞を防止できることは確認したが、生体での転移経路である静脈、リンパ管内での運動の解析はまだ出来ていないのが現状である。
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