研究概要 |
外傷等で腹腔内に貯留した血液が腸間膜血管を攣縮せしめて、その血流障害によりもたらされる腸管虚血、その後の腸管壁を通過してのbacterial translocationが発生するか否かについて検討した。回盲部より3cm口側の腸管壁を採取し、xanthine oxidase(XO),xanthine dehydrogenase(XDH)活性を検討したところ、正常血球群、血球をsonicationにて破壊した破砕血球群および破砕血球にLPSを添加刺激した群においてはXO,XDH系に何らの異常も認められなかった。しかし、LPSにて刺激した正常血球群においては腹腔内投与2時間後にXO+XDH活性(mU/ml protein)4.00±0.41,6時間後3.69±0.51,12時間後4.39±0.88,%XO活性が2時間後18.9±1.9,6時間後39.7±4.8,12時間後42.8±5.5であり、6時間、12時間後において有意なXOとXDHとの間のconversionを認めた。Catalase活性(k/mg protein)はXO,XHD系と同様に正常血球群にLPSを添加した群において、2時間後0.048±0.003,6時間後0.021±0.001,12時間後0.019±0.001と6時間、12時間後においてcatalaseの有意な増加を認めた。TBB反応物質(nmol/g protein)においても正常血球群にLPSを添加した群において、2時間後31±5.1,6時間後88.3±9.9,12時間後102±11.9と6時間、12時間後にTSA反応物質の有意な増加を認めた。 以上の結果により、腹腔内に貯留した血液はそれ自体では血管攣縮、腸間膜血流障害、腸管脆弱、bacterial translocationという一連の連動的障害には関与しないが、腸管破裂等があり、しかも、多少時間が経過したような状態、すなわち、腹腔内貯留白血球がLPSなどで刺激されるような状態が惹起される際には、腸間膜血管の攣縮が引き金となりbacterial translocationが発生するものと結論づけられた。
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