研究概要 |
平成6年度は中枢神経系を介してのサイトカインの代謝動態に及ぼす影響について検討した。すなわち,手術侵襲後にみられる糖,蛋白代謝の変動と同じ変動がサイトカインの脳室内投与によって引き起こされるかどうかについて検討した。実験の当初はラットの側脳室のチュービングと完全静脈栄養カテーテルの挿入の2つの手術侵襲によってラットの生存率は約40%であったが,現在は手術手技の向上によって約80%となり実験モデルとして安定している。IL-1aの側脳室内投与では100ng/Kgの注入によって4時間後の糖産生速度が約40%の増加を認めたが,同量の静脈内投与では変化を認めなかった。一方,蛋白合成速度,崩壊速度の測定は平成6年9月から12月まで液体クロマトグラフィーのオートサンプルインジェクションシステムが故障により十分な検体処理ができなかった時期もあったが,IL-1の脳室内の投与によって筋肉の蛋白合成速度は低下し,全身蛋白崩壊速度は増加する傾向を認めている。また,静脈投与では蛋白代謝の変動も認められなかった。TNFaの脳室内投与によっても術後にみられる糖,蛋白代謝動態の変動が再現され,又,同量のTNFaの静脈内投与で変動がみられないことから,現在,フェンタニル麻酔を行い,サイトカイン脳室内投与による代謝変動の是正が可能かどうかについて検討しているが,無侵襲下ではフェンタニル麻酔によって糖産生速度が増加するという問題が出て来ている。実験モデルの安定に時間を要したこと,および液体クロマトグラフィーの故障によって実験計画の若干の遅延が認められたが,次年度は手術侵襲後のサイトカイン拮抗物質の効果についての実験を開始することを目標にしている。
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