研究概要 |
本研究では,胎児を用いて先天性左室肥大モデルを作成することが大きなステップであるが,当教室におけるこれまでの大動物子宮内手術の経験から得られた知見より,子宮内手術操作によりもたらされる胎児期の急激な血行動態の変動に,胎児心筋が代償しきれない可能性が考慮された.そこで,胎児心筋の心筋特性に関する理解が必須と考え,摘出心臓潅流モデルでの心機能評価,特に左室肥大に直接関連する後負荷特性を明らかにすることを考えた. 本年度は,実験に必要な潅流装置としてハートパ-ヒュージョンシステム(Radonotti社 120140)を購入,実験室に備え付けた.胎児心筋を含め胎児組織は脆弱で精緻な実験操作が要求されるため,前段階として潅流回路の習熟を目標に予備運転としての潅流を行った.そして潅流条件の適性化へ向けて調整を試みた.実験動物の供給先に羊の受精を調整するように依頼しているが,この報告書を作成している現時点では希望する妊娠100-120日の状態の良い羊を手に入れることはできず,その供給に備え待期している段階である.摘出心臓潅流実験後,胎児心筋では後負荷に対する代償機構が未発達であるとの知見が得られれば,子宮内手術操作時には胎盤循環内の血管抵抗増加を極力抑える等の対策を加味した実験系を考慮すべきと考えている.
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