研究概要 |
動脈拡張性病変の早期診断により、動脈瘤危険因子を治療、除去し、動脈瘤化を遅延させることが可能であると考え、以下の実験を行った。 ヒト大動脈血管内皮細胞を8PDLまで継代培養し、酸化的ストレスとそのスカベンジャーであるMn-SODの関係について検討した。これは、高酸素負荷によりミトコンドリアの電子伝達系からスーパーオキサイドアニオンを発生させることにより行った。 (1)時間依存性について15分、30分、60分のtime courseを作り検討した。30分以上の高酸素暴露により24時間から48時間後にかけて細胞死を誘発することができた。 (2)電子伝達系を特異的に阻害する4種の薬剤を用いて濃度依存性について検討した。dinitrophenol, oligomycin, antimycin A, potassium cyanideの濃度がそれぞれ50μM、80μM、1μM、200μMの時に有効に電子伝達系を抑制することができた。 (3)電子伝達系を抑制した状態で高酸素暴露を行い、細胞障害とMn-SODの誘導について検討した。dinitrophenolとoligomycinを投与した場合のみに有意に増殖能が維持された。しかし、Mn-SODはむしろ濃度が低下した。 dinitrophenolはミトコンドリア内で行われるエネルギー代謝を抑制せず、電子伝達系で生ずるプロトン勾配を低下させることが知られている。本研究でdinitrophenolとoligomycinが酸化的ストレスを軽減することが示唆された。当初内皮細胞障害のマーカーにならないかと考えたMn-SODは、電子伝達系を抑制することでいずれの場合も誘導は低下したため、酸化的ストレスの指標としては使えなかった。。しかし、dinitrophenolとoligomycinは酸化的ストレスを軽減する治療上の役割を果たす可能性を持つことが分かった
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