新潟大学医学部付属病院で手術を受けた肺腺癌患者のうち、病理医の許可が得られ、当研究用に新鮮凍結標本およびホルマリン固定による永久標本を作ることができた32例を解析した。 1:p53蛋白免疫染色 32症例のうち変異型p53蛋白発現を認めたのは26例(79%)だった。病理病期別変異型p53蛋白発現の頻度はI期:82%(22例中18例)、II期:67%(3例中2例)、III期:100%(4例中4例)、IV期:67%(3例中2例)。T因子別ではT1:82%(22例中18例)、T2:75%(8例中6例)、T3:100%(2例中2例)、T4:症例なし。N因子別ではNO:81%(26例中21例)、N1:50%(2例中1例)、N2:100%(3例中3例)、N3:100%(1例中1例)で4あった。 P53変異と予後の検討は、観察期間が短くデータが得られなかったので解析できなかった。 2:DNA抽出とシークエンス 新鮮凍結標本を作製した症例のうち数例についてはDNA抽出を試みたが、試薬の調整不備、および手技の稚拙もありDNAを十分に抽出することができなかった。 今回の実験では検討症例が少なかったため、変異型p53蛋白発現の有無と臨床病理学的因子との間に統計学的な有意差を導くことはできず、また、傾向も示すことができなかった。今回の実験は短期間かつ症例数が少ないため、まとまったデータを出すことができなかった。今後、実験を続けていくとともに、これらの症例の予後調査を続け、変異型p53蛋白発現が予後不良因子かどうか確認していきたい。
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