研究概要 |
開心術患者において、(1)胸骨正中切開直後および(2)体外循環中、大動脈遮断解除後完全対外循環から部分対外循環に移行後5分の2点で肺胞洗浄を行った。肺胞洗浄液から回収したマクロファージおよび血液中の単核球はフローサイトメトリーを用いて細胞表面抗原の解析を行った。血清および肺胞洗浄液中のTNFα、IL-6,IL-8、可溶性ICAM-1とE-セレクチンを測定した。末梢血および肺胞マクロファージ培養上清中のTNFα、IL-6、IL-8を測定した。肺胞洗浄液の細胞分画は体外循環前はマクロファージが92±4%、大動脈遮断後はマクロファージが94±2%と大部分を占めた。モノクロナール抗体を用いたマクロファージの表面抗原のフローサイトメトリーによる解析では、体外循環前と大動脈遮断解除後の平均蛍光強度の比は、抹梢血マクロファージではCD11a、CD11b、CD11c、CD18は明らかな変化を認めなかったが、肺胞マクロファージではCD11a、CD11b、CD11c、CD18の4抗原が大動脈解除後高値を示した。体外循環前と大動脈遮断解除後の血清および肺胞洗浄液中のTNFα、IL-6、IL-8は有意の変化を示さなかった。血清および肺胞洗浄液中の可溶性ICAM-1とE-セレクチンは体外循環前と大動脈遮断解除後で有意の変化を示さなかった。末梢血および肺胞マクロファージ培養上清中のTNFα、IL-6、IL-8の測定では、末梢血マクロファージ培養上清中のサイトカインは体外循環前と大動脈遮断解除後で有意の変化を認めなかったが、肺胞マクロファージ培養上清中のTNFα、IL-8の有意の上昇が認められた。以上より、体外循環により肺胞マクロファージの接着分子の発現が増強し、接着分子を介した細胞間の接着とそれに引き続くサイトカインの放出が体外循環後の肺障害のメカニズムの一つであることが示唆された。
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