心房細動は血行動態の悪化、血栓閉塞症の発生する危険性がある場合非薬物療法の適応となっている。現在Cox教授の考案した心房筋をリエントリ-が生じないように切開、再縫合するMAZE(迷路)手術が臨床に応用され効果を挙げてきた。しかしこの術式の欠点は手術侵襲が大きいことである。今回の研究ではメスに代わりワイヤーを心房筋層に留置し高周波通電を行い、より侵襲の少ないMAZE手術がなし得ないかどうかを検討した。 心房筋層に留置する場合ペーシングワイヤーが太ければ出血をきたし、細ければ焼灼が得られない事が判明した。すなわち壁の薄い心房筋に対しての心筋層内での高周波アブレーションは困難であり、心内膜あるいは心表面からの高周波アブレーションによる心房筋に対する焼灼が必要となった。臨床応用を考えると、左右心耳に関しては心表面からのアブレーション、その他の部位に関しては心表面と心内膜からの組み合わせが適当と思われた。 また心室頻拍例においてシリコンバルーンに近接双極電極をはめ込んで試作したバルーン電極で心内膜マッピングが可能である事を確認できた。これを心房用に作成すれば心房細動例においても心内膜マッピングが可能である事が予想された。さらに材質を考慮すればこのバルーン電極に高周波アブレーション用ワイヤーを組み込む事で心内膜アブレーションも可能となり、電気生理学的検査に基づいた安全で確実なMAZE手術を行い得るものとして期待される。
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