研究概要 |
単純浸漬保存中の心筋電気インピーダンス(EI)の経時変化の相違、心筋内ATP、移植再潅流後の心機能を捕え、心保存中のEI測定の心筋viability評価法としての妥当性を検討した。(方法)実験1:雑種成犬の浸漬心保存中のEIを経時的に測定し、心筋の抵抗率(ρ)を算出した。保存液にはEuro-collins液を用い保存温度を4℃、15℃、25℃の3群とした。同時に心筋を採取し高速液体クロマトグラフィーにて心筋内ATPを測定した。実験2:4℃生理食塩水(S群)、VW液(V群)に浸漬保存した雑種成犬のEIを経時的に測定し、ρを算出した。同時に心筋内ATPを測定した。実験3:生理食塩水に保存した群は、保存4時間(S4群)、8時間(S8群)、UW液に保存した群は保存8時間(U8群)において、頚部異所性移植を行い、移植再潅流後の左室Emaxを求めた。(結果)実験1:ρは各群とも時間と共に上昇し保存時間の経過につれ上昇率は低下した。保存温度が高い程、保存中のρの変化は早期に大きく、上昇率は早期に低下した。実験2:ρは両群とも保存後約4時間まで同様に上昇し、U群は以後上昇し続けたがS群はわずかに減少した。またATPはS群、U群それぞれ保存後4時間で56%,70%,8時間で42%,60%とU群はS群に比し高価であった。実験3:頚部異所性移植を行った保存心のEmaxは移植前に対し、S4群:94%,S8群:72%,U8群:104%でS8群はS4群に比し有意に低下し、U8群はS8群に比し有意に高価であった。(まとめ)心保存中のEI測定により心筋viabilityをリアルタイムかつ非侵襲的に評価できる可能性が示唆された。現在は開心術中における臨床的検討を行っている。
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