ウサギ頸動脈に対して血管内腔注入法、プルロニックゲルに混入して血管外壁に塗布する方法の両者を用いて、iv vivoで遺伝子導入を行いその発現を検討した。まず組織化学マーカーであるβ-ガラクトシダーゼ発現ベクターをウサギ頸動脈に導入し、X-gal染色にて導入したベクターの発現を調べた結果、血管内腔注入法及びゲル塗布法のいずれの方法においても遺伝子導入を行った血管において、主に血管平滑筋細胞にβ-ガラクトシダーゼ活性が認められた。しかしその発現はごく一部の細胞に限られており、遺伝子導入の効率は低い事が示唆された。続いてC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)およびその特異的受容体であるANP-B受容体の発現ベクターを作成し、それぞれウサギ頸動脈に導入した。3から7日後に頸動脈をサンプリングし、mRNAを抽出した後、RT-PCR法によってCNPおよびANP-B受容体の発現をmRNAレベルで確認することができた。さらにCNPに対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行いCNPの蛋白レベルでの発現確認を試みたが、バックグラウンドとの判別が困難であり成功しなかった。最後に、頸動脈内皮バルーン損傷モデルおよび静脈グラフトモデルに対してCNP、ANP-B受容体を同時に遺伝子導入し、2週間後にサンプリングして内膜増殖の程度を調べたが、遺伝子導入を行った時と行わない時で内膜増殖の程度に明らかな差は認められなかった。今回遺伝子導入により血管壁の新生内膜増殖を抑制する事ができなかったのは遺伝子導入の効率の低さが主因であると考えられた。従って今後は遺伝子導入の効率を改善することが必要であり、アデノウイルスの感染力を利用したウイルスベクターの作成を試みる予定である。
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