研究概要 |
肺移植における術後肺水腫は再灌流時に発生する活性酸素がその主な原因と考えられている。このような再灌流障害を抑制することは移植治療における少ないドナー臓器のvibilityを保つ上で非常に重要である。ADF(adult T-cell leukemia derived factor)は生体内の酸化還元反応を調節するhuman thioredoxinであることが明らかにされた。我々はすでにラットの虚血再灌流モデルにおいてこのADFがラジカルスカベンジャー効果を持つことを明らかにしている。本研究の目的は、雑種成犬を用いた同種左肺移植モデルにおいて、このADFの虚血再灌流障害抑制効果を検討することである。我々はすでに雑種成犬を用いた自家左肺移植において温阻血の許容時間は120分間であることを確認している。雑種成犬に左肺移植を行なうモデルで温阻血後の再灌流障害に対するADFの効果を検討した。100分の温阻血の後に左肺移植を行ない、ADF(30mg/kg)を再灌流直前から30分かけて投与した。移植後10,40,70,130分後の移植肺の酸素可能はコントロール群では125±30、125±21、145±22、96±10mmHg(Fi02=0.5)と低下したが、ADF群では256±29、263±36、261±35、260±33mmHgと保たれており、ADFの効果が明らかになった。ADFの肺移植後再灌流障害に対する効果は明らかになり、平成6年度の目標はおおかた達成された。以後は予定通り、長期保存後の再灌流障害に対するADFの効果を検討する予定である。
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