研究概要 |
1.急性期移植肺評価(ウサギ肺灌流モデルによる実験) 体重2.5kgの家兎を人口換気し、換気停止による心停止を得、常温にて0〜60分後放置した後、心肺ブロックを摘出した。他のウサギより採取した血液を充填した回路に心肺ブロックを接続し、1時間再灌流後に灌流肺の静脈圧を上昇させ、その時の重量変化率と、Hakimらの肺静脈閉塞法から求めた肺毛細血管圧の関係から、Starlingの式における膜の濾過係数を算出した。その結果死戦期を経て摘出した肺の濾過係数は60分以上の虚血群で増加していたが、好中球エラスターゼ阻害剤を使用することにより抑制されることが示された。さらに好中球除去のフィルターにより作製された好中球除去血による再灌流においても好中球エラスターゼ阻害剤と同等に抑制された。濾過係数の増加および抑制は組織学的にも肺間質の好中球数と相関していた。 同所性移植モデルによる移植肺評価 我々が既に作製したラット同所性右肺移植モデルを使用し、移植後左肺全摘出移植肺依存ラットによる心停止常温放置移植肺の機能的評価を行った。近交系LEWIS雄性ラットを用い、本年度は常温放置0分のコントロール群を評価した。急性期(n=5)移植1時間後100%酸素人口呼吸器下で対側肺動脈を結紮し10分後肺動脈圧、動脈血ガスを測定した。遠隔期(n=5)には移植後2週目左肺を摘出し移植後6週まで各週毎に小動物トレッドミルにて段階的運動負荷を加え耐運動能を測定した。急性期:平均肺動脈圧;17.0±5.8mmHg,PaCO2;32.5±4.7mmHg 遠隔期:最大耐用速度;29±2.0m/min、最大酸素摂取量;65.0±3.8ml/kg/minであり、早期及び遠隔期ともに良好な移植肺機能を有した。
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