研究概要 |
開胸術予定肺癌患者に万歩計を用いた家庭リハビリを行い、家庭リハビリが耐運動能の向上に有効かどうかを検討した。1.対象:開胸術予定肺癌患者13例とした。2.方法:万歩計を用いてリハビリ前の1日歩数を1週間測定し、術前平均1日歩数を求めた。術前平均1日歩数の2倍以上の歩数を歩くよう指示した。3週間以上のリハビリができた症例を評価可能症例とした。リハビリの前後に肺機能と段階的運動負荷試験を行った。3.結果:リハビリ後の最大酸素摂取量(maxVO2)または、静脈血乳酸値が2.2mmol/Lの時点での酸素摂取量(La-2.2 VO2:empirical anaerobic threshold)がリハビリ前に比し、5%以上改善した症例は8例(有効群)、5%以下であった症例は5例(無効群)であった。無効群のうち2例はリハビリ中の歩数がリハビリ前の歩数の1.0と1.1倍であり、リハビリがほとんどできていなかった。他の2例はVC,FVC,FEV1,MVVのすべてが低下しており肺癌の進行が考えられた。最後の1例は僧房弁疾患を合併していた。有効群8例のリハビリ中の一日歩数は術前の2.5±1.8倍であった。有効群の肺機能はFVC(3.04±1.00→3.25±0.93 L:P=0.02)とVC(3.13±0.97→3.35±0.99L:P=0.0018)はリハビリ前後で有意に増加したが、FEV1.0(1.90±0.70→1.94±0.68 L/s)とMVV(73.1±26.3→75.2±27.7 L/min)は有意な変化を認めなかった。運動負荷試験においてはmaxVO2/BSA(636±181→705±168ml/min/m^2:P=0.0003),max-O2-pulse/BSA(4.64±1.23→5.17±1.13ml/m^2:P=0.0011)、および、La-2.2 VO2/BSA(452±88→504±108ml/min/m^2:P=0.0052)はともに有意に上昇した。以上より約3週間の万歩計を用いた家庭リハビリで耐運動能の改善が得られることが明らかとなった。O2-pulse、empiricalATの改善から循環の改善であることが示唆さた。
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