研究課題/領域番号 |
06671366
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
藤原 巍 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90090224)
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研究分担者 |
後藤 真己 川崎医療短期大学, 医用電子技術科, 助教授 (50148699)
小笠原 康夫 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10152365)
辻岡 克彦 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30163801)
梶谷 文彦 川崎医科大学, 医学部, 教授 (70029114)
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キーワード | 心筋内slosh現象 / 冠動脈狭窄症 / 心筋虚血 / 高周波数超音波ドップラー血流速計 / 大動脈内バルーンパンピング / 血管内皮機能 |
研究概要 |
冠循環の血流調節は、冠動脈硬化症、高血圧や心肥大など種々の疾患を背景として破綻し、その結果心筋虚血が発生する。その際すべての病態に共通して言えることは心内膜側心筋が心筋内で最も虚血に陥り易いことである。その主たるメカニズムとして、最近、心筋内slosh現象など心筋収縮・弛緩が心筋内血管・血流に及ぼす影響の重要性が指摘されている。たとえば、高血圧性心肥大では、重症化するにつれて収縮期冠動脈逆流が増加するとともに拡張期冠動脈血流が減弱・遅延し、その際、冠予備能が減弱する。これらの血流動態は心内膜側心筋潅流に対して不利に作用すると考えられる。そこで、種々の心疾患や治療手技において、心筋収縮・弛緩が心筋内血流動態に及ぼす影響を直接、定量的に評価することが重要と考えられる。まず、近年、心臓手術対象例の重症化に伴って使用される頻度が高まっている循環補助法が心筋内血流動態に及ぼす影響と、これに対する血管内皮機能異常の影響を中心に検討した。循環補助法の中でも使用される頻度が特に高い大動脈内バルーンパンピング法が心筋内血流動態に及ぼす影響を実験動物(大型イヌ)を対象にして評価した結果、大動脈内バルーンパンピングは心筋内血流動態に影響を及ぼすが、その程度は冠動脈狭窄の程度によって異なることが明らかになった。すなわち、高度の冠動脈狭窄がある場合には、大動脈内バルーンパンピングは心筋内の血行動態にほとんど波及せず、心筋内slosh現象を悪化させないことが示された。したがって、大動脈内バルーンパンピング法は冠動脈狭窄症に対して心筋内血流動態の面から有用であると考えられた。ついで、高血圧症や高脂血症に合併する血管内皮機能障害の影響について検討したところ、冠動脈血管内皮機能障害が存在する場合には、大動脈内バルーンパンピングがもたらす心筋内循環系への血流改善効果は著しく減弱された。これらの検討を通じて、内皮由来一酸化窒素を介した内皮依存性血管拡張機構が冠細動脈の血管拡張、および拍動性に著しい影響を与えることが示唆された。
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