研究課題/領域番号 |
06671383
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
若林 俊彦 名古屋大学, 医学部, 助手 (50220835)
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研究分担者 |
吉田 純 名古屋大学, 医学部, 講師 (40158449)
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キーワード | テネイシン / 細胞外マトリックス / 脳腫瘍 / グリオーマ / 腫瘍マーカー / モノクローナル抗体 / 髄液 / 診断 |
研究概要 |
目的:我々はテネイシンの異なるエピトープを認識する2腫類の抗体を用いたテネイシン高感度定量用EIAキットを共同研究にて開発し、このキットが脳腫瘍の生化学的診断に臨床応用可能かを判定するため、脳神経疾患施設にて経験した症例の髄液や血清中のテネイシン量を同定し臨床的検討を行なった。方法:EIAキットの感度は10ng/ml(100pg/tube)であり、フィブロネクチンやラミニンなどの類似物質との交差性は認められていない。このキットを用いて脳腫瘍の症例も含めた検体の髄液、血清ならびに腫瘍内嚢胞液等に含まれるテネイシンをそれぞれ測定した。測定に、おいて以下の2点を特に注目した。1)各種神経疾患【非脳腫瘍疾患57例症、脳腫瘍疾患105例(グルオ-マ系腫瘍54例)、計162例】より採取した髄液中のテネイシン含有量を定量し、組織診断・悪性度との相関関係を比較検討した。2)同一症例において経時的にテネイシン髄液内濃度を測定することにより、その臨床的病態変化や治療効果の判定にテネイシンの定量が評価可能かを検定した。結果:1)非脳腫瘍症例では、髄膜炎症状を合併する場合にはテネイシン濃度は100ng/ml以上を呈するが、その他は極めて低値を示した。2)グリオーマ系脳腫瘍症例の66%が100ng/ml以上を呈し、組織学的悪性度や髄腔内播種に応じて数値が上昇する傾向を呈した。3)グリオーマ系脳腫瘍や一部の悪性脳腫瘍において各種治療が奏効した場合には、100ng/ml以下の低値を示す一方、同一症例でも腫瘍の再燃時には著名な上昇を呈した。4)非グリオーマ系腫瘍ではその殆どが100ng/ml以下の低値を示したが手術侵襲直後や炎症・播種等を疑わせる場合には高値を呈するものが存在した。5)病期の初期段階では髄液中に出る前に、腫瘍内嚢胞に検出される。これは、テネイシンが腫瘍細胞から分泌(shedding)あるいは細胞融解にて髄液中に検出されるようになることを意味していると考えられる。6)鑑別診断として、画像診断上その鑑別が難しい悪性リンパ種や転移性脳腫瘍でテネイシンが陰性であることは髄液による腫瘍鑑別診断の可能性を示唆する。さらに、聴神経腫瘍、下垂体腫瘍、髄膜種(悪性も含む)、及び非腫瘍症例との鑑別診断は充分可能性が有る。結語:以上の結果よりテネイシンの髄液内定量は、グリオーマの診断、治療効果の判定などに有用と考えられた。
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