正中縫線核神経細胞と網膜神経節細胞においてpatch clamp法を用いてcalciumおよびpotassium channelを解析した。 1)正中縫線核神経細胞におけるwhole-cell current clamp法による実験;この神経細胞の活動電位の過分極相は、TEA(tetraethylammonium)により阻害される電位依存性potassium currentと4-AP(4-aminopyridine)により阻害されるA電流により制御されることが明らかとなった。また、TEAによる活動電位の持続時間の延長は電位依存性を示し、TEAによる活動電位の持続時間の延長作用は膜電位が脱分極したときに限られる。このことは、正中縫線核神経細胞ではTEAにより阻害される電位依存性potassium currentは不活性化機構の働きが弱いことを示唆し、A電流は不活性化機構の働きが著しく強いことを示唆している。また、活動電位の後過分極電位はcalciumの細胞内への流入阻害により消失することより、calcium-dependent potassium channelにより調節されることが判明した。 2)正中縫線核神経細胞におけるwhole-cell voltage clamp法による実験;TEAにより阻害される外向きのイオン流は脱分極性のステップ電圧によって低下せず、また過分極性のprepulseによってもこのイオン流は不変であった。したがって、TEAにより阻害される外向きイオン流は不活性化機構の働きが弱いことが示唆された。一方、4-APにより阻害されるA電流は持続時間が短く、過分極性のprepulseによって著しく増加した。このことより、A電流には強力な不活性化機構が存在することが示唆された。 3)網膜神経節細胞におけるwhole-cell voltage clamp法による実験;酵素的に単離した網膜神経節細胞を用いて、Naイオン流を選択的に測定した。この細胞におけるNaイオン流は一過性で、haloperidolによって可逆的に阻害された。今後は脳血管平滑細胞においてpatch clamp法を用いて、calciumおよびpotassium currentを測定する。
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