本研究ではモヤモヤ病の病因を解明をめざしていた。平成6年度の研究結果、モヤモヤ病患者4名の髄液中に正常人にはみられない多彩なサイトカインの免疫活性が発現していることを発見し報告した(平成5年度ウィリス動脈輪閉塞症調査研究班報告書)。これらは、脳虚血に対する脳組織の反応のみならず、モヤモヤ病に特徴的な血管新生に関与している可能性がある。ついで、モヤモヤ病に特徴的な内頸動脈終末部の狭窄性変化はその部にかかる血行力学的負荷が原因の一つであると仮定しin vitro実験をおこなった。in vitroにおいて血行力学的負荷に代わる刺激として振盪刺激を培養血管平滑筋細胞にくわえて、培養細胞の増殖曲線を検討した。その結果、モヤモヤ病患者由来の血管平滑筋細胞で対照群と異なり振盪刺激により増殖が促進する細胞系がみられた。この原因として、培養平滑筋細胞からのサイトカイン産生が亢進しautocrineに作用していたか、平滑筋細胞のサイトカイン感受性が高まっていた可能性が考えられた。次に、振盪刺激による塩基性線維芽細胞増殖因子産生をconditioned mediumのウェスタンブロティングで検討したが、明らかな免疫活性は確認できなかった。振盪刺激によりモヤモヤ病患者由来平滑筋細胞では、サイトカイン・レセプターのupregulationなど感受性亢進が出現していたとも考察される(平成6年度ウィリス動脈輪閉塞症調査研究班報告書)。本研究で用いた平滑筋細胞は病変部ではない浅側頭動脈由来で、病変部である内頸動脈終末部由来ではないことであるが、浅側頭動脈にも狭窄病変が進行している例もあり、モヤモヤ病における病変血管の特徴を備えているとみられる。以上の研究結果より、モヤモヤ病の病因として血管平滑筋細胞におけるサイトカインの関与が示唆された。
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