研究概要 |
これまでのG-CSFをはじめとしたサイトカイン遺伝子導入による悪性脳腫瘍の遺伝子療法の基礎的研究に加え、本年度の研究では老化誘導遺伝子であるp21あるいは細胞周期調節遺伝子であるp16遺伝子導入による悪性ヒトグリオーマ培養細胞の増殖抑制効果を確認しえた。また更に脳腫瘍の発癌メカニズム解明のため、悪性グリオーマ患者からの臨床材料及びその他の脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、転移性脳腫瘍、胚細胞腫)において、細胞の老化に関与するテロメア長、あるいは無限増殖に関与すると考えられているテロメアーゼの活性について検討した。その結果、astrocytomaでは18例中10例でその活性が確認され、また胚細胞腫、転移性脳腫瘍でも高率に発現が確認された。これに対し、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫等の良性腫瘍においてはその発現は確認されず、脳腫瘍においても細胞の不死化にテロメアーゼが関与している可能性が示唆された。現在、各種脳腫瘍におけるテロメア長の検討を行なっている。さらに悪性ヒトグリオーマ培養細胞におけるp21,p16のtransfectantにおいても、同様の検討を行なったが遺伝子非導入細胞とテロメアーゼ活性の変化は認められなかった。GFAPは脳腫瘍細胞に認められる細胞骨格の一つでその発現は腫瘍の分化度と相関することが知られている。GFAPの遺伝子をヒトグリオーマ細胞に導入したところ増殖に抑制が見られ坑ガン剤に対する感受性が上昇するなどの治療に応用出来うる形質変化が認められた。しかしGFAP遺伝子導入によりテロメラーゼ活性に変化は認められなかった。
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