研究概要 |
我々は悪性脳腫瘍に対する遺伝子療法の基礎的研究をサイトカイン遺伝子、細胞周期調節遺伝子、細胞骨格遺伝子導入を用い検討し以下のような結果を得た。サイトカイン遺伝子に関してはこれまでに他施設との共同研究により悪性脳腫瘍培養細胞に対しTNF-α,IFN-β遺伝子をリポソームで導入することにより抗腫瘍効果をin vitro,in vivoで共に確認している。我々はさらにG-CSF遺伝子をリポソーム法でヒトグリオーマ培養細胞に細胞に導入しこれをヌードマウス皮下に移植したところ、G-CSF遺伝子非導入腫瘍細胞はヌードマウス皮下に生着したが、G-CSF遺伝子導入腫瘍細胞は皮下に生着せず組織学的に好中球の著明な腫瘍内浸潤が認められ抗腫瘍性との関連性が示唆された。また我々は今回、細胞周期調節遺伝子であるp16あるいはp21がヒトグリオーマ培養細胞あるいは臨床材料において欠失ないしは変異をきたしていることを明らかにした。さらにこれらをヒトグリオーマ培養細胞に導入し、transfectantにおける細胞増殖能を検討したところいずれも細胞増殖に抑制が認められ、遺伝子導入効率の改善により臨床における抗腫瘍効果が得られる可能性が示唆された。GFAPは脳腫瘍細胞に認められる細胞骨格の一つでその発現は腫瘍の分化度と相関することが知られている。GFAPの遺伝子をヒトグリオーマ細胞にに導入したところ増殖に抑制が見られ坑ガン剤に対する感受性が上昇するなどの治療に応用出来うる形質変化が認められた。以上悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療の基礎的研究結果が得られた。
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