研究概要 |
我々は、U373MG(神経膠芽腫細胞株)が小さなVEGFmRNA(1.0,0.8kb)を発現していることをNorthern blot analysisにて確認し、このU373MGから分離したmRNAをPrimer extension analysisのtemplateとして用いた。Primerとしては翻訳開始点から上流の三カ所に対応する21merのspecific primer三本(Pl:+1-+30,P2:-359--389,P3:-786--816)を合成し使用した。各々についてPrimer extension analysisを行ったところ、U373MGにおけるVEGFの転写開始点は翻訳開始点から-490bp上流に存在していた。従来の報告では転写開始点は-1.039kbとされているが下流にも転写開始点が存在することになる。この転写開始点からmRNAが転写されるとcoding regioinは保存されたまま小さなVEGFmRNAができることが判明した。VEGF遺伝子の5'non-coding regioinはGC sequenceが数多く存在する。このGC rich portionは他の成長因子(bFGF,TGFb)でも認められ、その機能としてはtranslational controlに関わっていると考えられてる。この結果から、ある種の腫瘍細胞では小さなVEGFmRNAを転写することで従来の大きさのVEGFmRNAからのVEGF蛋白の合成とは何らかの違いを生じている可能性が示された。今後我々は、このmRNAレベルと蛋白レベルの発現に関して解析を加えてゆく予定である。
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