研究概要 |
我々の開発した静脈瘻モデルを用いて以下の点を解明した。1)静脈圧亢によりAVFが新たに発生する機序について:basic fibroblast growth factor(bFGF)に対するmonoclonal抗体を用いた免疫組織学的手法で人硬膜動静脈奇形の静脈洞(Acta Neurochir 1996 in press)静脈圧亢進ラットの静脈および静脈洞にbFGFが発現することを確認した。このことより、静脈壁に生じるangiogenic factorが硬膜動静脈瘻の発生に何らかの関与をしていることが示唆された。2)AVF発現を修飾する因子(estrogen)の検討:estrogen投与ラットと非投与ラットの間でAVFの発生率に差ができるかを検討したが、有意の差は出現しなかった。以上より、estrogen自体はAVFの発生そのものには影響しないと考えられた。3)動静脈瘻発生機序に関する組織学的検索:静脈圧亢進ラットの、樹脂注入による鋳型標本の走査電顕による3次元構造の観察は、再度注入条件を変更し試みたが、やはり静脈洞近傍の血管がきれいに描出できなかった。ラットでは樹脂標本による組織学的検索は困難と考えられた。4)今後の検討:従来の我々のモデルを用いて実験を行う予定であったが、Herman(J.Neurosurg,539-545,1995)らが、我々と類似の静脈圧亢進モデルに静脈洞閉塞を加えることにより硬膜動静脈瘻が約40%に出現したという報告を出したため、我々も従来のモデル(動静脈瘻発生は約10%)に静脈動閉塞、静脈洞損傷を加えることにより、より高頻度に硬膜動静脈瘻が形成されるかをまず、検討している。
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