研究概要 |
成犬18頭で上矢状静脈洞(SSS)およびこれに流入する両側上大脳静脈(SCV)を含む血栓モデルを作成した.即ち,SSSおよびSSSに流入する両側SCVを露出し,両側SCVのSSSへの流入部を含むように,SSSを前後3cmにわたって,自家血,トロンビン,Gelfoam powderによって閉塞させた.実験-1:モデルにおける急性期脳循環動態の観察を行った.前頭葉皮質血流量(rCBF)はlaser-Doppler血流測定装置で計測した.結果:1)SSS圧は閉塞前2.8±3.7から,閉塞後68.2±23.7(mmHg)まで上昇した.2)静脈圧上昇時の前頭葉rCBFはSSS圧上昇に伴ってrCBFは低下した(%CBF=45.9+0.4x%CPP脳潅流圧,r=0.56,P=0.001).実験-2:tissue plasminogen activator(tPA)局所投与による血栓溶解を行った.閉塞後1、3時間目にtPA,750国際単位/hour/kgをSSS内に持続注入した.結果:1)1時間目投与群では,投与から約1時間後に,静脈造影にて再開通を認め,組織学的検索でも明らかな異常所見は無かった.2)3時間目投与群では,血栓溶解は部分的であり,組織学的にもSCV領域に点状出血を認めた.総括:早期の血栓溶解の必要性が推察され,閉塞からtPAによる血栓溶解までのおおよその至適時間は推察された.しかし,tPAの至適局所投与量が問題となった.動脈閉塞の動物実験や人間の動脈性脳梗塞例の静脈投与量を参考にして,750国際単位/hour/kgで注入したが,更に増量ないし減量した場合の,治療効果の実験が必要である.また,閉塞作成6,12時間後の血栓溶解の研究は静脈閉塞による脳腫張出現のために,血栓溶解まで至らずに終わっている.
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