研究概要 |
静脈閉塞モデルはビ-グル犬30頭を用いて以下のように作成した。上矢状静脈洞(SSS)及びSSSに流入する両側上大脳静脈(SCV)を露出し、両側SCVのSSSへの流入部を含むように、SSS(およびSSSから約2cmの両側SCV)を前後3cmにわたって、自家血、トロンビン、gelfoam powderによって閉塞させた。<実験1>急性期脳循環動態の検索:結果1)SSS圧は閉塞前2.9±3.5から、閉塞後20.3±9.0(mmHg)まで上昇した(p<0.05)。2)静脈圧上昇時の前頭葉局所脳血流量(rCBF)は脳潅流圧(CPP=体血圧-SSS圧)低下に伴って低下した。しかし、脳血管抵抗はCPPの低下にともなって減少した(r=0.672,P<0.0001)<実験2>tissue plasminogen activator(tPA)局所投与による血栓溶解の効果:閉塞後1、3時間目にtPA、750国際単位/hour/kgをSSS内に持続注入した。結果:1)1時間目投与群では、投与から約1時間後に、静脈造影にて再開通を認め、組織学的検索でも明らかな異常所見は無かった。3)3時間目投与群では、血栓溶解は部分的であり、組織学的にもSCV領域に点状出血を認めた。<実験3>側副血行路作成による効果:閉塞部は放置して、SCVとSSSの心臓側に橈骨静脈を介在させて側副血行路を作成した。結果:側副路の開存率は約70%程度であった。1時間群では、側副路作成側には、組織学的にも梗塞の所見は見られなかった.一方、側副路非作成側では、SCVの潅流領域に小出血、浮腫、梗塞所見が認められ、明らかに左右差が見られた.3時間群では、側副路作成側にも虚血性変化が見られた。以上より、静脈閉塞性脳虚血に対して、tPAによる血栓溶解、側副血行路作成のいずれも治療効果のあることが判明した。しかし、いずれも方法も、閉塞後に至適時間内に開始すべきであることが明らかとなった。
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