当該研究初年度(平成6年度)は成猫を用い実験をおこなった。 本実験に先立ち、ケタミン麻酔ネコの大槽内に後頭下穿刺法にて経皮的にカオリンを注入し、注入後4-7日で急性水頭症が生じるのを待機した後、実験をおこなった。 I】脳内薬物注入の頭蓋内圧・脳局所血流に対する効果の検索: 延髄腹側ノルアドレナリン系(A_1、A_3)を化学的に賦活するため、グルタメイトの微量注入をおこない、頭蓋内圧(ICP)、脳血流(CBF)がどのように影響を受けるかを調べた。A_1及びA_3にグルタメイト微量注入すると、ICPの下降(下降の後再上昇)が惹起された。一方、前脳基底部コリン作動系(MS、DB、NBM、SI)にアセチルコリンを微量注入すると、ICPの上昇と大脳皮質血流の増加が観察された。 II】単一ニューロンの発射活動とICP・pressure waveとの時間的因果関係の検索: 延髄A_1及びA_3の単一ニューロンの発射活動を連続記録した。ICPの上昇に先行して発射活動は低下し、発射活動が再増加すると、数十秒の潜時の後にICPは下降した。A_1ニューロンとA_3ニューロンは、ほぼ同一の発射活動の変動を示した。このように、A_1及びA_3ニューロン活動とICPの変動が密接に時間的に連関していることが判明した。 III】橋被蓋野(CPA)と延髄A_1及びA_3とのニューロン機構の検索: コリン受容性作動性橋被蓋野(CPA)に微小電気刺激を加え、A_1及びA_3ニューロンの自発発射の変化を調べると、自発発射の抑制が観察され、多シナプス性抑制性神経結合の存在が判明した。
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