研究概要 |
成猫(カオリン水頭症ネコ)及びラットを用い実験をおこなった。 I]ラット前脳基底部への薬物注入の頭蓋内圧・脳局所血流に対する効果: (i)マイネル核(NBM)あるいは無名質(SI)にグルタメイトを微量注入するとICPの上昇(17.0±12.5mmHg→38.7±20.1mmHg.mean±S.D.)と、前頭葉脳血流の増加(33.1±11.0ml/100g/min,→48.5±9.2ml/100g/min,mean±S.D.)が惹起された。 (ii)中隔野(MS,HDB)にグルタメイト、アセチルコリンを微量注入するとICPの上昇(12mmHg→20mmHg)と全身血圧の極軽度の下降とそれに引き続いた軽度の上昇が起き、海馬領域のCBFの増加が観察された。 II]カオリン水頭症ネコを用いた実験 本実験に先立ち、ケタミン麻酔ネコの大槽内に後頭下穿刺法にて経皮的にカオリンを注入し、注入後4〜7日で急性水頭症が生じるのを待機した後、実験をおこなった。 (i)脳内薬物微量注入の頭蓋内圧、ヒステリシス面積率に対する効果:ネコの視床下部(dorsomedial hypothalamic nucl,DMHを中心)にアセチルコリンを微量注入し、コリン受容系・作動系を化学的に賦活すると、軽度の全身血圧の低下を伴う頭蓋内圧(ICP)の顕著な上昇(5〜8分間)が惹起された。この時ICP pulse waveとBP pulse waveから計測されるヒステリシス面積率(Rh%)の増加(25%→50%)が観察された。 (ii)単一ニューロンの発射活動とICP変動との時間的因果関係:DMH単一ニューロンの発射活動の記録から、DMHニューロンの中にICPの自然の上昇に先行して、その発射頻度が増加するものがみつかった。橋被蓋(CPA)又は対側DMHにAchの微量注入をおこなうと、ICPの上昇が惹起されるが、この時DMH単一ニューロン(対側)の発射活動が賦活されたのが観察された。また、発射頻度が変動しないニューロンも混在していた。 以上、視床下部・前脳基底部に脳血管を直接制御する機構、あるいは代謝を介する間接的制御機構が存在することを示唆する結果を得た。
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