研究概要 |
後索を切断した後、対側の視床知覚中継核を刺激強度(5T of primary cotical response)及び刺激頻度(25Hz)で電気刺激し、これにより後索核の視床投射neuronに逆行性の放電を持続的に起こさせ、延髄後索核内および大脳皮質知覚領野での神経回路の活動を人為的に変化させた場合のreactive gliosisおよびmicrogliaのactivationがどのような影響をうけるかを免疫組織学的に観察した結果、後索核内のastrocyte, microgliaの反応性の増加を軽度認めたが、後索切断のみをおこなった場合と比べ有意な増加ではなかった。しかし大脳皮質知覚領野におけるmicroglia, astrocyteの免疫反応性は後索切断を行わずに刺激をおこなった場合と比べ有意に増加し、microgliaの形態は明らかにameboidの形状を示した。このことより、正常神経回路の活動性を変化させた場合より損傷された神経回路で且つ神経遮断された領域において、glia細胞の形態および増殖能は神経活動性変化の影響を受けやすいものと考えられた。またbFGFの反応性も神経遮断領域で神経活動性を変化させた場合にastrocyteにおけるGFAP反応の増強に伴い増加し、この変化がglia細胞を介した神経栄養効果を促進するものと考えられた。GFAP反応の増加をGFAP mRNAのinsitu hybridizationにて検討をおこなうと刺激24時間までは、免疫組織学的には、GFAPの発現は増加するが、GFAP mRNAの変化しないことが明らかとなった。したがって神経回路の活動性を変化させた場合に発生する早期のastrocyteの反応は細胞の増殖を伴わず、既に存在していたastrocyte内のglia線維の構造上の変化をきたし、この時期には刺激により放出された神経伝達物質やイオンの取り込みなどに関係した変化であることを示唆し、神経活動性は密接にglia細胞の機能に影響を及ぼすことが明らかとなった。
|