研究概要 |
ラット脊髄後索を切断した後、刺激条件を変化させ24時間の視床電気刺激を行った場合の延髄後索核、大脳皮質知覚領野でのastrocyte,microgliaの反応を観察した結果、大脳皮質知覚運動領野において50Hz以下の刺激で、これらのglia反応が刺激強度と共に増加してゆく傾向が認められた。またastrocyteにおけるbFGF活性もGFAP亢進と同時に亢進した。次に大脳皮質知覚運動領野の一部を除去し、視床からの神経投射を遮断しておき、視床の持続電気刺激を行なったところ、bFGFの発現が損傷部で有意に増加した。以上のような反応が実際に成熟中枢神経系において神経回路を再構成しうる反応であるか否かを検討するために、損傷部に胎仔ラットの大脳皮質を移植し、移植片内へのacetylcholine esterase陽性線維の伸長および移植片内でのシナプス形成の指標としてsynaptophysin免疫染色を行ったところ、視床刺激を行った場合に移植片内への神経線維の伸長ならびにシナプス小胞蛋白の出現が有意に促進された。したがって神経回路の遮断により発生するglia反応は成熟中枢神経系においても神経再生に関係し、胎生期にみられるsynaptogenesisに類似した反応であり、これが神経回路の活動により促進されるものと考えられた。またラット皮質脳挫傷モデルに対して、astrocyte,microgliaの反応を観察したところ、これらの反応が損傷の及んでいない海馬などでも増強し、またキヌレン酸投与によって神経細胞の脱分極ならびに興奮性アミノ酸の放出を抑制した場合に低下することより、外傷早期のglia反応の増強が神経伝達物質やイオン移動に関係して発生すると考察した前年度の結果を裏付けるものと考えられた。
|