1.伴性劣性遺伝性水頭症の臨床像 日本こども病院神経外科医会会員の協力を得て自験6家系14症例を含む15家系30症例についての臨床像を検討した。(JNeurosurg 印刷中)(1)診断時期;在胎21週より生後2ケ月の間に診断した。胎生期に診断した18例はすべて胎児エコーで、生後診断した12例はCTあるいは気脳室撮影で診断した。(2)画像所見;シャント前CT(12例)では、著明な側脳室拡大を全例に認めたが、第3脳室の大きさは症例により異なった。シャント後CTでは、縮小した脳室壁は不整な波状の形態を示し、一側の非対称な縮小を認めた例が多かった。MR画像(6例)では、中脳水道は4例で開存しており、脳梁欠損、視床癒合、四丘体平坦化、小脳虫部前葉萎縮、硬膜肥厚などを大部分の症例で認めた。(3)中枢神経系外合併奇形としては、拇指の内転屈曲を77%に認めた。(4)治療および予備;無治療の10例では9例死亡、1例のみ重度精神運動発達障害を伴い生存中である。シャント施行20例では、14例生存中で11例は重度、3例は中程度の精神運動発達遅延を後遺している。(5)剖検(4例);中脳水道は全例で開存していた。以上のことから、本症は単なる中脳水道閉塞による水頭症ではなく、他の合併奇形を伴う複雑な病像を示す疾患であることが反映した。 2.分子遺伝学的研究 近年の分子遺伝学的研究により、本症の原因遺伝子座位がXq28に存在することが明らかとされ、本座位に存在するL1遺伝子変異が現在までに数家系で報告された。自験例で検討した結果、欧米と同一の変異は認めず、1家系においてL1遺伝子のヌクレオチド残基1963位に従来報告されていない変異を認めた。(投稿中)
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