研究概要 |
研究成果は次の3点である。 1)脳外套が高度に菲薄化する乳幼児期特有の水頭症モデルを仔犬に実験的に作成し、脳室拡大に伴う白質の髄液性浮腫の進展過程を動物用MR装置を用いて経時的に観察し、浮腫液の水分子の組織内拡散度を分子拡散強調画像法によって解析した。 2)短絡管設置により菲薄化した脳外套が白質の主としてアストロサイトの増生によって修復されることを形態学的に確かめ、さらに免疫組織化学的ならびにin situ hybridization法でアストロサイトにbFGFの発現が見られることを証明した。このとから脳外套修復の主体であるastrogliosisがbFGFによって制御されていることが推察された。 3)短絡管設置によって修復された脳では弾性脳が低下していることが、水頭症モデルで求めた頭蓋内圧-容積係数の実験で示された。さらに短絡管機能不全状態を作成した実験動物の組織学的検索からも短絡管設置脳における圧緩衝能の低下を説明できる結果が得られた。 水頭症治療による能外套の修復には、当該研究で明らかにされたastrogliosisを始めとする組織の搬痕性変化による機能的な弊害がある一方で、神経組織を保護する役割を合わせ持っていることが推測される。今後の研究では、能が正常な機能を維持,回復し得る水頭症の治療を目指して、脳外套修復過程における神経組織の再生,保護についての検討が必要であろうと思われる。
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