本研究の目的は骨肉腫の抗癌剤耐性、特に治療体系の主体となるメソトレキセート(MTX)に対する薬剤耐性の機序を明らかにすることにある。一般的に悪性腫瘍の薬剤耐性としては能動的薬剤排泄機構である細胞膜上のp等蛋白が想定されているが、我々はMTX耐性に限ってはその標的であるdihydrofolate reductase(DHFR)の誘導による細胞内DHFR活性の増加を考えた。用いた細胞株はヒト骨肉腫株NOS-1とマウス骨肉腫株Dunnである。Dunnは高感受性株であった。当初NOS-1を低濃度のMTXに暴露することにより耐性株を作成しようと考えたが300代を越える長期継代培養の結果NOS-1はすでに耐性となっていることが分かった。MOS-1はMTX 5μg/mlでわずかに増殖が抑制されるものの再増殖によりコントロールと変わらない増殖を示した。50μg/mlの高濃度では増殖が抑制され形態的には核の腫大を認め、フローサイトメトリーを用いた核DNA量の測定ではG_2ブロックによりS期細胞の増加を認めた。Dunn骨肉腫細胞はMTX 5μg/mlの濃度で完全に死滅した。 それぞれの細胞を回収し、凍結融解と超音波処理により細胞を破壊、細胞抽出液を作成した。この抽出液を分光光度計を用いてヤトロン社製MTX測定キット中のDHFR標準液の酵素活性と比較することにより細胞内DHFR活性を測定した。その結果1回の測定ではNOS-1がDunnの2倍の酵素活性を示したが、再現性に乏しく、また希釈により得られる理論値からも大きくはずれる結果だあったので現在再度細胞を抽出しキットも変えて測定中である。またキット内の試薬も再検討している。今後は細胞よりRNAを抽出しPCR法でDHFRのmRNAを増幅し発現量を比較する予定である。また現在細胞内MTX濃度を経時的に測定することで能動的MTX排泄の可能性を検討している。
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