マウスの肝類洞や腸管上皮で分化する胸腺外分化T細胞が明らかとなり、これらの細胞はT細胞でありながらNK細胞類似の性格をもっている。ヒトでもNKマーカーであるCD56およびCD57を有するT細胞が存在しこれらがヒトの胸腺外分化T細胞と考えられている。今回慢性関節リウマチ患者(以下RA)でCD56およびCD57を有するT細胞につき検討した。対象は新潟大学整形外科で加療中のRA患者30例で男2例、女28例。27から85歳、羅病期間は10カ月から30年である。対照群は健常人14例、変形性関節症7例、計21例、年齢は22から68歳である。対照群の末血、RA患者の末血、関節液、滑膜、関節近傍の骨髄からリンパ球を分離し各種モノクローナル抗体を用いflow cytometryにて解析した。外科手術時に採取した胸腺のリンパ球も同様の解析を行った。CD57^+T細胞は胸腺にはほとんど存在しなかった。CD57^+T細胞の全T細胞中にしめる割合は、対照群の末血で9.8%、RAの末血で15.6%、関節液で21.3%、滑膜で17.8%、骨髄で34.2%で、末血では対照群と比べRAで有意に高値を示し、RAでは関節液と骨髄で末血と比べ有意に高かった。CD57^+T細胞は、形態でlarge granular lymphocyte(LGL)を呈し、CD8が有意であった。CD57^-T細胞は、CD4が有意であった。CD57^+T細胞は、CD4^-CD8^-が15.3%、TCRγδが19.8%を占めたのに対し、CD57^-T細胞は、CD4^-CD8^-が4.7%、TCRγδが4.2%で、CD57^+T細胞はマウスの胸腺外分化T細胞に似た性質を示した。CD56^+T細胞も胸腺に殆ど存在しないが、対照群と比べ末血での増加はなく、また関節液、滑膜、関節近傍の骨髄で増加は認められなかった。CD57^+T細胞はRAで増加し表面マーカー、形態からマウス胸腺外分化T細胞と共通の性格を有していた。RAでは破壊関節の関節液と関節近傍の骨髄で高値を示し骨髄と関節液の何らかの関連性が考えられ、RAの病態に関与している可能性が考えられた。
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