ラットによる過去報告例と同様の条件でネコのc-fos免疫染色を行ったが、バックグラウンド染色が強すぎたためfos陽性細胞の検出は困難であった。そこで使用する一次抗体の濃度および染色時間とヤギ血清の濃度を変更した基礎実験によりネコでのc-fos免疫染色は可能となった。c-fos陽性細胞は大脳皮質、動眼神経核、赤核、前庭神経核、延髄網様体など運動路の細胞群に認められ、予想された錐体路および錐体外路系の諸核が賦活されていたことを示した。 しかしながら、いずれも円形の小型細胞に染色を認めるのみで、大径のaxonをだす大型出力細胞は全く染色されなかった。経頭蓋磁気刺激による脊髄伝導路は主に大径の皮質脊髄路であることをヒトおよびサルで申請者は明らかにしている。同時に行なっているネコの脊髄硬膜外電極による磁気刺激誘発脊髄電位の研究でも、錐体路以外の様々な大径axonの索路が活性化されていることが明らかになった現在、大径のaxonをだす大型細胞のc-fos活性を染色する必要性があると判断された。大型出力細胞が染色されない原因としてc-fos geneの特性以外に麻酔薬の影響に基づく可能性は否定できないため、麻酔剤をフェンタニールからケタミンに変更して基礎実験を追加実施しているところである。 ヒトの磁気刺激誘発脊髄電位は錐体路に由来するが、ネコではより広い範囲に刺激が広がっていることが推察される。大脳皮質および間脳、中脳、延髄まで磁気による刺激が拡散している可能性はあるが、大型細胞のc-fos活性を染色することにより、もれなく全ての中枢神経代謝活性が明らかにされると予想される。
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