研究概要 |
転移に際し、腫瘍細胞は、血管内皮下のバリヤ-である基底膜を浸潤破壊する必要があり、基底膜浸潤は、転移成立に極めて重要なステップと考えられている。われわれが開発したin vitro invasion assayにおいて、従来は、細胞株についてのアッセイしかできなかったが、生検や手術でえられた臨床サンプルも、いったんprimary cultureすることにより、アッセイが可能となった。その結果、良性腫瘍は浸潤能を示さないが、悪性腫瘍は浸潤能を示した。 線維肉腫細胞においては、基底膜の酵素的破壊に働くtype IV collagenaseの活性が、72kDa, 92kDaのtype IV collagenaseとcollagenaseのインヒビターであるTIMPsの発現のバランスにより規定されており、細胞内cAMPを上昇させる薬剤(cAMPアナログなど)を投与すると、腫瘍細胞の、TIMP1、TIMP2の発現上昇によりtype IV collagenase活性が低下し、浸潤能、転移能が抑制されることをmRNAレベルだけでなく、蛋白レベルでも明らかにした。 また、基底膜浸潤を果たし、標的臓器実質内に着床した腫瘍細胞は、既存の血管から新生血管を誘導し、酸素や栄養物を得て増殖していく。この腫瘍血管新生も転移形成に重要なプロセスだと考え、腫瘍血管新生の研究にも着手した。まず、基底膜抽出物マトリゲルを用いた新しいin vivo腫瘍血管新生定量法を開発した。本法を用いると、既存の血管新生阻害剤であるTNP470による血管新生阻害と腫瘍増殖抑制を確認することができた。
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