研究概要 |
昨年度の報告書にも記したように、リポゾーム法によるプラスミドベクターの関節腔内直接注入による遺伝子発現方法では、ベクターの関節外漏出による他臓器での発現は避け得ることは出来なかった。このことからアデノウイルス、レトロウイルス等の高高率の発現を期待できる導入方法を用いても、臨床応用するにあたり、解決されねばならないこの問題点はクリア-出来ないものと判断した。少なくとも軟骨特異的プロモーターやEXVIVO等の方法を用いない限り、関節組織特異的な発現は不可能と考えている。 そこで昨年度は、ラット関節軟骨細胞の重要な細胞増殖、分化促進因子であるTGF-βの作用機序を解明すべく、主に細胞内情報伝達経路を中心に検討を行なってきた。その中でc-fos遺伝子の早期発現が軟骨特異的で、かつ細胞増殖に必要である事から、c-fos遺伝子におけるTGG-β特異的標的配列を解析した。c-fos遺伝子はその上流からestrogen,sis-inducible(SIE),serum,cAMP responseエレメントが同定されているが、我々のCATアッセイの結果、培養ラット関節軟骨細胞では、少なくとも二つのTGF-β特異的レスポンスエレメントが存在することを見いだした。このうち、一つはSIEで有り、もう一つはこれからさらに50bp上流に存在する約30bpからなる塩基配列であった。後者はcmyc,plasminogen activator inhibitor,plasmin等で既に同定されているエレメントと約80%のホモロジーを有していることが判明した。現在さらに絞り込むべく、変異配列も含む二本鎖合成オリゴDNAを用いて、ゲルリターデイションアッセイを行なっている。また前者についてはStatファミリーに対する抗体を用いて、この部位に結合する蛋白の同定を試みている。
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