研究概要 |
平成6年度までに,OPLL患者と対照群において皮膚でのデコリンの染色性に差がある事が明らかとなったことから,さらに遺伝子レベルでのデコリンの発現量の差を検討した。 OPLL患者の項部の皮膚,対照群として他の脊椎疾患の項部の皮膚を手術時にそれぞれ採取し,パラフィン標本を作成した。そしてデコリンに対する特異的合成オリゴヌクレオチドプローブを作成。デコリンmRNAをin situ hybridization法により検出し,OPLL患者と対照群で比較検討した。 その結果,蛋白レベルのみならず,遺伝子レベルにおいてもOPLL患者でデコリンの発現が亢進していることが明らかとなった。OPPL患者皮膚の硬度異常の存在を考えると,この事実は,OPLL患者皮膚における細胞外マトリックスの異常を強く示唆する所見と考えられる。TGF-βはデコリンの発現を亢進させる事から, TGF-βに対する免疫組織学的検討も併せて行ったところ,有意な差ではないものの,OPLL群がやや強く染色される傾向があった。デコリンの骨化に及ぼす直接的な作用は未だ明らかではないが,これらの結果は血漿フィブロネクチンの増加の報告とともに,OPLLにおける全身的骨化素因を反映したものと考えられ,細胞外マトリックスの異常の存在を裏付ける結果と言える。細胞外マトリックスは増殖因子とともに局所の細胞の増殖・分化において重要な役割を持っている事が明らかとなってきており,異所性骨化の開始,あるいは進行において細胞外マトリックスの異常が付加的に何らかの役割果たしていることが推察された。
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