研究概要 |
[目的]椎間板に外力が加わると椎間板内の水分子は基質を構成する高分子の間を移動する。この過程において椎間板は加えられたエネルギーを水分子の運動エネルギーに変換しつつ粘弾性変形し外力を吸収する。本研究ではこの点に着目し、MRIを用いてヒト正常および変性椎間板の粘弾性特性と水分子の動態の関係を明らかにした. [実験材料]剖検時に得られた種々の変性度を有するヒト腰椎椎間板を上下椎体を含めて摘出して試料とした.実験終了後、椎間板を横切してLewinの分類により変性度を分類した. [方法]MRI装置としてGyroscan 1.5tesla(Philips)を使用した・MRIマグネット内にプラスチック製圧迫試験器を設置し、椎間板の垂直方向に100kgの静荷重を加え経時的にspinecho法,inversion recovery法により矢状断の画像を得た。spin echo像から椎間板高を計測し、Tl計算画像から水分子の動態を観察した。椎間板高から得られた時間-ひずみ曲線を用いて椎間板の粘性、弾性係数を求めた。 [結果と考察]椎間板の変性度の内訳はLewin grade I(slight degeneration)6椎間板、grade II(moderate degeneration)6椎間板、grade III(severe degeneration)6椎間板であった。grade Iの椎間板では圧迫開始後一過性に髄核中央部に水分含有率の増加を認めた、gradeIIの椎間間では増加することなく徐々に減少した。grade IIIの椎間板での水分含有率は圧迫前より低く、圧迫によっても大きく変化しなかった.髄核中央部における水分含有率の増加度と椎間板の粘性係数の間には正の相関を認めた。以上より、圧迫により椎間板内において水分子が一過性に求心性に移動することが椎間板の機能上重要な粘性に大きく関与すると考えられた.
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